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「地域全体で子ども達を見守る空気感を作る」子どもが主役となるイベントを、民間有志が主体となって開催した経緯とその理由。

地域のつながり方

2023年春、さいたま市桜区で民間有志が主体となり地域の子ども達に向けて3つのイベントが開催されました。

イベントの一つ「春休み!子ども応援!まちフェス桜!」(以下、まちフェス桜!)は3月25日(土)〜4月9日(日)という小学校の春休み期間に渡り、区内全体の協力店舗が会場となって開催。
期間中、区内の子どもたちは協力店舗で職業体験をしたり、割引やプレゼントなどのサービスを受けることができました。

さらに期間中の3月26日(日)には固定の会場が用意され、さまざまな出し物や体験コーナーを楽しめるイベント、「しびらき祭」と「夢桜(ゆめさく)さいたまつり」を同時開催。
「夢桜さいたまつり」では【子ども専用エリア】が用意され、事前に募集した子どもスタッフが主体となってイベントを企画・運営し、多くの子ども達が参加者として会場に足を運び楽しむ姿が見られました。

近年のコロナウイルス感染拡大で学校行事や地域イベントの中止など、さまざまな我慢を子どもたちが強いられることに。
「まちフェス桜!」を始めとした今回の3つのイベントの企画は、そんな地域の子どもに向け、地域の大人から思い出に残ることをプレゼントしたいという想いが原点にあります。

イベントを通して、子ども達が主体的にイベントを企画・運営し成長する姿や、地域の大人が「得意な仕事」を通して子ども達とつながる姿が印象的でした。

なぜこのような大がかりのイベントを民間有志で企画しようと考え、実際に開催できたのでしょうか。
今回は運営メンバーの1人である認定NPOお法人みんなの夢の音楽隊代表で、地域の小学校のPTA会長を長年務めた経験もある今川さんに、3つのイベントを企画した経緯や理由、開催して感じたことを中心にお話を伺いました。

「やりたい!」を全て詰め込んだイベントに

──「まちフェス桜!」を始めとした3つのイベントは、どういった経緯で開催されることになったのでしょう?

今川さん私は普段から、子どもたちが楽しめるさまざまなイベントの企画・開催に携わっているのですが、ここ数年、コロナウイルス感染拡大の影響でほとんど開催出来ませんでした。同様に、学校の行事や子ども向けの地域イベントの多くが中止となってしまって。

今年はある程度落ち着き、さまざまなイベントが再開できるかと思いきや、その担い手の方々が活動自体をやめてしまったり、一度中断したことでイベント自体がなくとも別に良いのではないかという空気が出来ていたんですよね。
それは残念ではありますが、終わるイベントがあるなら新しく始まるイベントがあっても良いのではないかと思いまして。

普段から仲良くしている桜区内のPTA会長の方々や子ども達に向けたイベントをされている方々を中心に話し合って、まち全体で子どもたちにとって思い出の残ることをしようと「まちフェス桜!」を始めとした3つのイベントを企画しました。

今川さんが企画・開催に携わったイベントの様子

──イベントの内容はどのように決めていったのでしょうか?

今川さんまずイベント企画メンバーでやりたいことを話し合いまして、職業体験や子どもが主体となったイベントの企画・開催など、さまざまなアイディアを出しました。

行政や企業から委託を受けてイベントを開催する場合であれば、予算や会場、期間が決まっている場合が多いので、何を実際に行うかを精査していく必要があるのですが、民間有志で行うお祭りなので、せっかくだから全部やっちゃおうとなったんです(笑)。

イベントのポスターと詳細

協力店舗さんの声を最大限反映させることで、今までにないイベントの形式に

──なんだかワクワクするお話ですね(笑)。それはイベントの開催形式にも現れていますよね。
職業体験や特典を受けられる「まちフェス桜!」の開催期間は2週間で、会場は固定されておらず、それぞれの協力店舗。その期間中に1日だけ固定の会場を用意して大人も子どもも楽しめる2つのイベントを同時開催しましたね。この形式はどのような流れで決定していったのでしょうか?

今川さん初めは1箇所に集まり1日だけイベントを開催するオーソドックスな形式を想定していました。
ですが職業体験を提供してくださる協力店舗さんにヒアリングをしていくと、直接店舗にきてもらえると負担が少なく、かつ実際の仕事に近い職業体験を提供しやすいという声をいただきまして。

さらに店舗で開催することによって、1日だけではなく複数日、職業体験を提供出来るという店舗さんも多くありましたので、会場は固定せずに開催期間も子供が春休みの2週間の間としました。

「まちフェス桜!」のポスターと詳細

──そのような流れだったのですね。イベントが長期間に渡り、職業体験会場がさまざまな場所に点在していることで、区全体でイベントを開催しているような雰囲気になるのも良いですよね。

今川さんそうですね。
子どもたちにはお店の方と交流することで、地域内に自分のことを応援してくれている大人がたくさんいると感じてもらえたのではないかと思っています。
イベントが終了しても定期的に交流が続いて、子どもたちを地域全体で見守る空気感が出来たら最高ですね。

──それはすごく良いですし、その素地になりそうなイベントでしたよね!
今回のイベントは子どもだけでなく、子どもを通して大人が地域のお店を知るきっかけにもなっていそうですよね。

今川さん子どもたちはあまり来なかったけど、パンフレットを見た保護者がたくさん来たというお店もありました。地域にあるお店を知り、実際に行ってもらうことで、桜区内でお金を使ってもらったり、大人同士の顔見知りが出来るきっかけになったのではないかと思っています。

職業体験の様子

初開催ならではの苦悩

──地域でお金を使うことや知り合いが増えることが、自身の住みやすさや地域の魅力拡大にも繋がっていきそうです。
3月26日(日)にプラザウエストの一部を使用して開催された「夢桜さいたまつり」では【子ども専用エリア】を用意し、子どもが主体となってイベントを企画・運営していましたね。カップケーキなどの食べ物や、風船釣りなどの出し物を多くの子ども達が楽しんでいたのが印象的でした。どのような流れで進めていったのでしょうか?

今川さんまずはイベントを企画・運営する子どもスタッフを募集しまして、みんなでやりたいことを話し合い、実現するためにはどのような準備が必要か決めていきました。
その後、シミュレーションを何度か繰り返して、当日を迎えたような流れです。

「夢桜さいたまつり」のポスターと詳細

── 事前準備から当日までに苦労はありましたか?

今川さん今までにも同じようなイベントを開催した経験がありましたので、スムーズに進めることが出来ました。
自分達でイベントを作り上げていく過程で、どんどんと成長していく子どもたちが本当に頼もしかったです。

苦労でいえば、「しびらき祭り」を除く「まちフェス桜!」と「夢桜さいたまつり」は初開催ということもあり、パンフレット配布だけでは具体的なイベント内容がイメージしづらかったようで、集客が大変でしたね。

【子ども専用エリア】のイベントの様子

人のつながりの大切さ

──開催したことがないイベントの内容を伝えるのはとても難しそうですよね。
集客に苦労された一方で「まちフェス桜!」では初めての開催にも関わらず、54もの協力店舗が集まりましたね。どのようにお声がけされていったのでしょうか。

今川さん初めは一店舗、一店舗に企画書を持って訪問していたのですが、驚くほどに受け入れてもらえなくて(笑)。
協力してくれる仲間や想いに賛同してくださった方を通じて、お店へ声がけしてもらうことで続々と参加を表明してくださりました。

人のつながりの大切さを実感しましたね。
一度開催したことでイベントの全体像を認識してもらえたと思うので、次回はより多くのお店に参加してもらえそうだなと感じています。

「夢桜さいたまつり」の様子

──それは楽しみですね。 イベントに参加した子どもたちの反応はいかがでしたか?

今川さん楽しかったと言ってくれる子がたくさんいましたね。
来年も開催すれば、今年以上に参加してくれるのではと感じています。

ただ、その子どもたちに対応できるだけのイベントの企画・運営をする大人スタッフの人数を確保できるかどうかという不安はありますね。

──スタッフとして関わりたくとも、長時間を活動にさくのは難しいからと躊躇している方もいらっしゃりそうです。

今川さんそうですね。
企画・運営に一気通貫して関わらなくとも、スポットでお手伝いしてもらえるような提案をしたりと、協力のグラデーションを作っていきたいなと思っています。

「しびらき祭り」のポスターと詳細

イベントを継続的に開催するために

──スタッフの方はもちろん、協力店舗の方との関係性も今後イベントを継続的に開催する上で大切なことですよね。

今川さんそうですよね。
開催回数を増やしたり協力店舗の方との関係性を深めることで、店舗と子どもたち、双方にとって満足度の高い職業体験や特典を作っていけるのかなと思っています。

今回、実際に開催してみて、満足度が高い取り組みの傾向が見えてきましたので、それらを参考に協力店舗の方とコミュニケーションを取っていきたいですね。

── 開催される毎に質が高まっていきそうで、とても楽しみです…!
今川さんは今までにさまざまなイベントに携わってこられましたが、イベントを継続して開催する上で大切だと思うことはありますか?

今川さん企画者側が疲弊しないことです。
「楽しかったけど、来年またやるのは辛いな」と思ってしまったら開催出来ないですからね。

今回でいえば、運営メンバーの負担は6〜7割くらいにおさえられたかなと感じています。
協力店舗さんに関しては今回のような通常営業の延長線上で関わってもらうことで、負担が軽減できるのかなと感じています。

「しびらき祭り」の様子

──たしかに、続けるために無理のない範囲で携わってもらうことはとても大事ですね。

今川さんそうですね。打ち上げ花火のようなイベントになってしまうと、子どもたちを裏切ることになるので、それだけはしたくないと思っています。

今は今年の経験を経て、既にさまざまなリニューアルを考えていますので、それをどう落とし込むか考えているところです(笑)。

──おお!どのようなリニューアルになるのか楽しみにしております。

編集後記

コロナ禍でさまざまな”経験”をする機会が奪われてしまった子どもたちにとって、自分たちだけでイベントを作り上げたり、職業体験をする機会は本当に貴重な時間になったのではないでしょうか。

また、職業体験を通して、大人が”得意”なことを活かし子供と関わる経験は、大人にとっても変え難い経験になったはずです。

子どもとまちの大人の架け橋となり、双方にとって貴重な経験をする機会となった『まちフェス桜!』をはじめとする今回の3つのイベント。

継続的に開催されることによって、桜区内の子どもたちが街の大人が応援してる・見守ってくれていると感じられる空気感が育まれていき、地域の人と人とのつながりが確実に作りあげられていくように感じました。

これらのイベントが今後どのような発展を遂げていくのか、本当に楽しみです。