2023年3月、JR京浜東北線・北浦和駅近くに木造瓦葺2階建の古民家を改築した庭付きのシェアハウス「コミューン浦和 領家」がオープンした。
手がけたのは株式会社エステート常盤代表取締役の船本義之さん。
船本さんは高度経済成長期、浦和がベッドタウンとして発展していくと同時に人のつながりが薄くなっていたことに疑問を感じ、2019年にゆるやかな人のつながりが生まれる共同体を目指す、賃貸住宅「コミューンときわ」を作った。
建物内には中庭やフリースペースなど、住民同士の自然な交流が生まれる設計がなされている。
「コミューン浦和 領家」は人のつながりを大切にする船本さんが作った2つ目の賃貸住宅だ。
今回は船本さんに、コミューンときわを3年間運営して感じたこと、コミューン浦和領家を作った経緯、これから有休資産などの地域資源を活かして取り組んでいきたいことについて伺った。
目次
「人のつながり」が自発的に生まれる環境
──2023年の2月で「コミューンときわ」が3周年を迎えましたね。建物内には中庭やスタジオ、菜園、バーべキュー・コーナーなど、住民同士の自然な交流が生まれるような設計がなされているのが特徴的ですよね。ここまでの3年間を振り返ってみていかがでしょうか?
船本さんありがとうございます。
実は入居開始時期とコロナウイルスの感染拡大が重なりまして。
初めはなかなか入居者が決まらずとても苦労しましたが、徐々に部屋が埋まっていきました。
住民同士のつながりを大切にしていますので、初めの時期は運営スタッフが主体となって積極的に住民の交流イベントを開催するようにしていましたね。
満室となったあたりから、徐々に住民の方が自発的にワークショップや講演会などのイベントをスタジオで開催してくださるようになってきまして。
そこには地域住民の方も多く参加されていて住民の方だけでなく、地域の方も含めた交流とつながりが生まれていることを実感しています。
──徐々に「人のつながり」が自発的に生まれ、さらには地域の方が交流する場所にもなっていったのですね。
船本さんそうですね。
始まって3年も経つと引っ越しをされる方もいらっしゃるのですが、「コミューンときわ」で開催されるイベントに参加するためにわざわざ遠方から来てくださる、なんてこともあります。
離れてもつながりが継続されていることを感じられて、とても嬉しいですね。
──それは嬉しいですね…! 一方で課題と感じる部分はありますか?
船本さん多様な世代の方が住み、世代の垣根を超えた交流が生まれることを大切にしているので、単身、二人暮らし、子育て中のファミリー、子育てを終えたご夫婦などさまざまな間取りの部屋を用意しております。
ただ、どうしても生活リズムや趣味嗜好の違いから交流する人が限定されているように感じておりまして。
さまざまな世代が交流するきっかけが作れるよう、日々試行錯誤をしています。
より「人のつながり」が生まれやすいシェアハウス
──「コミューンときわ」が3年目を迎えたタイミングで木造瓦葺2階建の古民家を改築した庭付きの全6部屋からなるシェアハウス『コミューン浦和領家』をオープンされましたが、経緯をお伺いできますか?
船本さん水回りを共有するシェアハウスは、「人のつながり」がより自然と生まれやすいなと考えていまして、2021年の10月ごろから物件を探し初めていました。
不動産業者に相談したり、自ら歩きながら探した結果、ちょうど一年後の昨年10月にこちらの物件を見つけることができまして。
── 物件探しは順調にいかれたのでしょうか?
船本さん浦和付近は地価の高騰もあって、予算内かつ採算が取れる物件となると、なかなか大変でしたね。
探す範囲を広げてさいたま市全域や川口、蕨あたりも見ていたのですが、結果的に巡り合わせもあり北浦和で見つけることが出来ました。
── コミューン浦和領家では、「人のつながり」を作る上で大切にされていることはありますか?
船本さんシェアハウスの理念に共感していることが何よりも大切だと思うので、入居希望の方には私が直接面談を行うようにしています。
料金の面に魅力を感じて入居を希望してくださる方もいるのですが、出来るだけつながりを大切にしたい方に入居して欲しいですからね。
また、入居が決まった方とは日頃から連絡を取るようにしていて、週一回は直接シェアハウスの様子を見に行ってコミュニケーションを取るようにしています。
「ゆるやかな関係性」を増やしていく
── 管理者の方と気軽にコミュニケーションが取れるのは、とてもありがたいですね。相談事や要望をすぐに共有できそうです。
船本さん
よくよくはシェアハウス内でイベントを開催したり、「コミューンときわ」で開催されるイベントに参加してもらうことも考えています。
── 船本さんが管理している賃貸住宅に住んでいる人同士での、つながりを作っていきたいと。
船本さんそうですね。
定期的な交流を生む事によって、いざという時には助け合えるような「ゆるやかな関係性」を増やしていきたいなと思っています。
家族や親友のような強くつながった関係性も大切ですが、構築することは簡単ではなかったり、長続きしないこともありますからね。
── 想いに共感している人同士だからこそ、より自然と「ゆるやかな関係性」が醸成されていきそうです。今後、取り組んでいきたいことはありますか?
船本さん私が管理している賃貸住宅を増やしていきたいなと思っています。実は何件かお声がけもいただいておりまして。
ただ、まずは「コミューン浦和領家」をしっかりと賑わいのある場所にしていきたいです。
── 今後の展開が楽しみです!本日はありがとうございました。
編集後記
2019年に北浦和駅近くにゆるやかな繋がりが生まれる共同体を目指し作られた、賃貸住宅「コミューンときわ」
今回お話を伺って着実に住民の方同士、そして地域の方同士のつながりを醸成していることを実感しました。
「コミューン浦和領家」はシェアハウスということで、より強いつながりが生まれそうです。また、船本さんが運営している両物件の交流がどのような新たな出会いを生むのか、とても楽しみな点だなと感じました。
その一方で、地価が高騰している浦和付近で、採算が取れる物件を見つけることの難しさを痛感しました。
ただ、着実に船本さんの想いが伝播していることも実感した時間でした。
今後の船本さんの活動がどのように広がりを見せていくのか、とても楽しみです。