埼玉りそな銀行の支店跡地を活用して、周辺地域をつなぐ賑わいの”拠点”となる施設として誕生した「団地キッチン」田島。
『いえの味を、まちの味へ』をコンセプトとして掲げ、店内にはシェアキッチン、カフェ、ブルワリーが揃い、誰もが料理を「作る」「食べる」「知る」を楽しむことができます。
シェアキッチンには、製造業許可対応のプロ仕様の機材が完備され、趣味や家事として料理を作っていた方が、販売用の商品作りに挑戦することも可能。
ブルワリーでは地域の人の声から、区の花「サクラソウ」をイメージしたクラフトビールを作る動きなど、地域の名物やお土産を作る活動も。
月一度開催される「団地キッチンマルシェ」では、毎月埼玉県の名産品を中心にテーマ食材を設定。テーマ食材について深く知ったり、生産者さんと交流したりする機会を設けています。
今回は「団地キッチン」田島でコミュニティマネージャー兼醸造長を務める『日本総合住生活株式会社』の福田さん(トップ画像左)と、店長を務める『株式会社LC総合サービス』の柳川さん(トップ画像右)に、施設の誕生経緯や特徴、周辺地域をつなぐ賑わいの”拠点”となるための様々な取り組みを中心にお話を伺いました。
目次
”食”をテーマに地域における賑わいの拠点に
━━ まずは「団地キッチン」田島を運営されている『日本総合住生活株式会社』(以下、JS)についてお伺いできますでしょうか?
福田さんはい、弊社は主にUR都市機構(以下、UR)が取り扱っている賃貸住宅の管理や改修業務を行っておりまして、近年では団地を含む地域一体で多様な世代が生き生きと暮らし続けられるための住まい・まち作りに取り組んでいる会社でございます。
━━ どのような経緯でJSが「団地キッチン」田島の立ち上げに関わることになったのでしょうか。
福田さん 近年、西浦和駅周辺でさいたま市様、地域のまちづくり協議会様、URの三者を中心に再開発の話が進められています。
こちらの施設はまちづくりが進められている場所であり、元々「埼玉りそな銀行」様の店舗でしたが、撤退をされるということで、引き取り手を探されている状況でした。
そこで周辺団地の運営元であるURから、JSに駅と団地/団地と周辺地域をつなぐ賑わいの”拠点”となる施設を作れないか、という相談を受けたことがきっかけとなりました。
実は、幹線道路を挟んだ向かい側に弊社の研究施設がありまして、この付近に対して馴染みもありました。
━━ "食"をテーマに施設設計をされた理由をお伺いできますでしょうか?
福田さん今回、「駅と団地 / 団地と周辺地域」をつなぐ賑わいの”拠点”となる施設を作ることを求められていました。
施設のテーマについて検討する中で、"食"は誰にとっても身近であり、まちの人が集まり、つながるきっかけになると考えたことが大きな要因でした。
━━ たしかに、"食"ほど誰にとっても共通で身近なものはないかもしれません。「いえの味を、まちの味へ」というコンセプトを掲げている理由も、ぜひお伺いさせてください。
福田さん「団地キッチン」田島では、『カフェ』を通じて食事を提供するだけでなく、さまざまな方法でまちの人が料理を作り、提供するための施設や機会を設けています。
いえで作っていた料理を「団地キッチン」田島を通じてまちの人に提供することによって、人と人がつながったり、地域で活躍するきっかけになれたら嬉しいです。
━━ 「食べる」だけでなくまちの人が「作る」ために、カフェ以外にはどのような施設があるのでしょうか?
福田さんカフェに加えてシェアキッチン、ブルワリーを揃えておりまして、誰もが料理を「作る」「食べる」そして、「知る」を楽しめる施設設計となっております。
━━ 様々な側面から『食』を楽しむことができるのですね。
それぞれの施設の特徴や使い方が気になるのですが、まずは「シェアキッチン」からお伺いできますでしょうか?
福田さん広々としたイベント用キッチンを1つと製造業許可対応キッチンを2つ完備しておりまして、イベント用キッチンは料理教室や仲間内でのパーティ開催など、幅広い用途でご利用いただけます。
製造業許可対応キッチンは本格的な機材が揃っておりますので、
例えば趣味や家事として料理を作っていた方が、販売用の商品作りに挑戦することができます。
また、作った商品を店内で販売することもできます。
将来的に「団地キッチン」田島がきっかけで、地域に飛び出して店舗を持つような方が出てきたら嬉しいなと思っております。
地域の特産を使用したクラフトビール造りに挑む
━━ 製造業対応キッチンでは、プロ仕様の施設を使用することができ、さらには作ったものを販売することもできるのはとてもありがたいですね。「ブルワリー」はどのような特徴や使い方があるのでしょうか?
福田さん当ブルワリーでは少量生産できるという特徴を活かし、多様で特色のあるクラフトビール造りを行っています。
醸造したクラフトビールを同じ施設のカフェで味わったり、醸造ワークショップでクラフトビールの醸造を体験したりすることができます。
ワークショップでは皆さんで「ビールに合う地のモノは何か」を考えたり、一緒に協力しながらクラフトビールの醸造にチャレンジしたりしてもらいたいと考えています。
前回のワークショップでは狭山茶を使ったクラフトビールを作りまして、月に一回開催しているマルシェで販売をいたしました。
━━ 様々な素材を使用して造ることができるクラフトビールを通して、地域の名産を知るきっかけにもなっているのですね。
福田さんそうなんですよね。
地域の素材を使用して、クラフトビールを作ってほしいという要望をいただく機会も増えております。
最近は、区の花に指定されている「サクラソウ」をイメージしたクラフトビール造りに取り組んでいます。
手作り、彩り・配置にこだわった懐かしさが味わえる定食
━━ 地域の素材を使用したクラフトビールが生まれることによって地域への愛着や誇りが高まるきっかけになりそうですね。醸造したクラフトビールを味わうことができる「カフェ」はどのような特徴や使い方があるのでしょうか?
柳川さん施設のコンセプトとして「いえの味を、まちの味へ」を掲げておりますので、提供する料理は「いえの味」に仕上げることを大切にしているのが特徴です。
たとえばハンバーグ定食のメニュー開発では、ソースの味わいをご家庭でつくるハンバーグソースの味に寄せて、どこか懐かしさを感じていただけるようにしました。
また、手間はかかりますが、主菜だけでなく、お味噌汁や副菜類も可能な限り手作りすることを大切にしております。
━━ 実際に定食をいただいたのですが、とても美味しく、食べ終わった後にほっとした気持ちになりました。料理に対してどのような反応をいただくことが多いでしょうか?
柳川さんランチの定食を中心に、ご提供時に「わあっ!」という感嘆の声をいただくことがありますね。定食は、昔ながらの和食の献立形式である「一汁三菜」を基本に、各皿の配置や彩りにも気を遣っているからかもしれません。
手間をかけている分、ご提供の数量をあまり増やせないというもどかしさはありますが、お客様の期待に応えられるような料理をこれからも提供していきたいです。
━━ どのような利用が多いのでしょうか?
柳川さん食事を楽しんだり、ご家族やお友達とお茶をしながら会話を楽しむ方が多いですね。
最近は徐々に常連のお客様も増えてきまして、地域にとっての憩いの場となっているように思います。
居心地の良さを生む内観設計
━━ それは嬉しいですね。憩いの場となっているのは料理のおいしさはもちろん、店内の居心地の良さもあるのかなと感じました。施設内部の設計の特徴もお伺い出来ますでしょうか?
福田さん元々の建物の天井高を活かして縦の開放感を、キッチンやブルワリーをガラス張りにすることで横の開放感を生み出しております。
インテリアには木のアイテムを重用することで、温かみを感じられる内観に仕上げておりますね。
━━ 縦と横の開放感に加えてインテリアで温かみを表現していることが、居心地の良さにつながっているのですね。
店内の施設をガラス張りにすることで、それぞれの施設で行われている取り組みが目に入ってくるのも良いなと感じました。
柳川さんそうですね。カフェを利用されている方がシェアキッチンの様子を見て、何をしているのか興味を持って尋ねてくださることも多いです。
お客様との交流や、お客様が他の施設の活動に興味を持っていただくきっかけとなっていますね。
━━ 交流でいいますと、月に一回「団地キッチンマルシェ」を開催されていますよね。県内の農家さんと地域住民の方が交流するきっかけとなっているように感じます。
福田さんありがとうございます。
「団地キッチンマルシェ」では毎月設定しているテーマ食材に沿った、食材や加工品の販売、ワークショップを行っております。
テーマ食材について、より深く知ったり生産者の方と交流したりする機会になりましたら嬉しいですね。
過去には「深谷ネギ」や「クワイ」、狭山茶など埼玉県の名産をテーマ食材として扱いました。
地域の名物・お土産となる商品を
━━ 埼玉県の名産について深く知ったり生産者の方と交流したりする機会はあまりないので、とてもありがたいですね。
8月末で「団地キッチン」田島がオープンしてから1周年を迎えますが、今後力を入れて取り組んでいきたいことはありますでしょうか?
福田さん先ほどサクラソウをイメージしたクラフトビールを作っているというお話をしましたが、地域の名物・お土産となるような商品を作っていきたいなと思っていますね。
また、より地域の方に主体的に施設を活用していただける機会を増やしていけるよう、様々なイベントやワークショップを開催していきたいです。
私たちから積極的に地域に溶け込んでいきたいと思っておりまして、先日開催された地域のお祭り「まちフェス桜!」にも出店者として参加させていただきました。
これからも積極的に、地域で開催されるイベントや行事に関わらせていただけたらと思っています。
━━ 「団地キッチン」田島の今後の発展がとても楽しみです。本日はありがとうございました。
編集後記
『いえの味を、まちの味へ』をコンセプトに カフェ、シェアキッチン、ブルワリーを揃え、「作る」「食べる」「知る」を楽しめる施設「団地キッチン」田島。
シェアキッチンを通じた地域の人が夢を実現する環境作りや、ブルワリーを通じた地域の名物を作る動きなど、長年、団地やまちに携わってきた老舗企業ならではの企画力や資金力を活かした、地域活性の取り組みをされているなと感じました。
カフェ利用者には常連さんも多く、マルシェは回を追うごとに訪れる方が増えており、オープンして8月末で1年を迎える段階ですが、着実に地域に馴染んでいるなと感じます。
地域の人の活躍の場を作り、地域の愛着を高める活動に取り組む「団地キッチン」田島の今後の展開がとても楽しみです!
SHOP INFO
- 店舗名:「団地キッチン」田島
- 所在地:埼玉県さいたま市桜区田島6丁目1ー20
- カフェへのお問合せ:048ー767ー6404
- シェアキッチンやイベント開催、取材のお問合せ: js12230@js-net.co.jp
- 営業時間:11:00〜20:00
- HP:https://danchi-kitchen.com/
- SNS:@danchikitchen.tajima