最寄りの与野本町駅から徒歩13分の住宅街に現れる会場で開催されている「路地裏ガレージマーケット」
飲食、野菜、クラフト作品、占い、リラグゼーションなど、毎回多種多様な出店者が集まり賑わいを見せています。
元材木店の倉庫を利活用して始まった、マーケットイベントで、当初は月一回の開催が週一回となり、今では月火を除いた週5回に。
一番賑わう日曜日の開催回数だけで数えてもなんと合計400回を超え、今年の11月には9周年を迎えます。
今回は運営者の横山拓さんに「路地裏ガレージマーケット」を始めた経緯や、長年営業していく中での試行錯誤などを中心にお話を伺いました。
目次
実家の材木店の倉庫を利活用した空間で、こだわりを持った小商いさんと地元の人をつなぐ
━━ 本日はよろしくお願いします。「路地裏ガレージマーケット」はどのようなイベントなのでしょうか?
拓さん飲食、野菜、クラフト作品、占い、リラクゼーションなど、毎回多種多様な『こだわりの小商い』が集まるマーケットイベントで、始めた当初は月に1回程度でしたが現在は週5日間開催しております。
曜日によって出店する店舗数が変わりまして、水・木・金・土曜日は平均5店舗、日曜日は15店舗が集まりますね。
日毎にテーマ設定をすることもありまして、今年の8月5日には発酵(85)をテーマに出店者を集めたり、関連する映画の上映会を行いました。
━━ 行くたびに出店者の方が変わるので、毎回新たな発見があるなと感じます。
「路地裏ガレージマーケット」を開催しているこの場所は、元々どのように利用されていたのでしょうか?
拓さん僕の父が営んでいる「長竹材木店」という材木屋の倉庫として利用されていました。
僕が2011年から3年ほど「旅商人コーヒー屋台」という屋号で行商をしながら日本一周をしていました。その最中に両親からこの倉庫を手放すという話がありまして。
色々と考えた結果、長竹材木店の経営にも協力しつつ、マルシェやシェアハウスのなどの運営事業で収益を生んで家賃を払うから手放さないで欲しいと相談したんです。
━━ この場所は拓さんにとって特別な場所なのですね。
拓さんそうですね。
幼少期から父の仕事を見たり、手伝う機会があったのでこの倉庫に対してすごく思い入れがあったんですよね。とはいえ、時代の流れもあり経営が厳しくなっていることも感じていて。
実際、ここ20年で旧与野市に7つあった材木屋のほとんどがお店をたたみました。
倉庫を手放した方が経営の安定につながるとは思ったのですが、無くなったら二度と元に戻すことは出来ないので、話し合いを重ねて倉庫を引き継がせてもらいました。
それと、日本一周をする中でこだわりや想いを持って活動されている小商いさんと出会うことも多くありまして。そのみなさんの生き方や商品、作品を地元の皆さんに知っていただきたいと思ったんですよね。
倉庫を活用すれば旅を通して出会ったみなさんと、僕の地元のみなさんが交流し、いろいろな価値観を共有するような場づくりができるんじゃないかなとイメージが湧いてきたんです。
利用者の方から様々な要望やアイディアを出したくなる”余白”のある空間
━━ 実際にマーケットを開催していかがでしたか?
拓さん想像以上に好評で、地域の人だけでなく全国からお客さんが来てくれました。
そこから月一回の継続的な開催をするようになり、半月に一回、毎週日曜日、週5日と徐々に頻度が増加していきましたね。
頻度が増えてくると、小商いさんもお客さんも地域の方の割合が多くなってきました。
━━ 徐々に地域に対して開けた場所になっていったのですね。
出店されている小商いさんは、いずれも想いがこもった商品やサービスを提供されている方だと感じましたが、どのように募集をされているのでしょうか?
拓さん 基本的には随時募集をしております。
素敵だなと感じる人に出会ったら、僕から声をかけることもありますね。
募集に応募してくる方は、こちらから何か言わずとも自然とこだわりを持った小商いさんの場合が多いです。
多くの方はマーケットに足を運んだ上で応募してくださるので、場の雰囲気を見て、自身に合うかどうかを判断されているのかもしれません。
━━ 場の雰囲気が、さらにこだわりを持った方を呼び寄せる好循環を生んでいるのですね。場の雰囲気に大きな影響を与えている空間を作る上で、大切にされていることはありますか?
拓さん実は空間に関しては特にこだわりがなく(笑)。
始めた当初はほとんど何もない状態から、つどつど僕やスタッフ、利用者の方が必要だと思うものを作っていますね。
ソファやマッサージチェアや空調、DIYできないものはほとんどが貰い物です。
━━ 多くの方の要望や意見が現在の空間を作り上げているのですね。
拓さん多くの方にとって心地の良い空間を作るために、僕だけの発想では限界があると思うので、可能な限り皆さんの意見を取り入れたいなと思っています。
空間の使い方だけでなく、会場の利用方法を利用者の方から色々と提案してもらう機会も多いです。
━━ 実際に利用者の方の提案から採用した利用方法はありますか?
拓さん最近ですと、ヨガやギター教室を開催する場所としての利用はまさにそうです。
元々マーケットとしての「ものの売り買い」だけを想定していたので、空いた時間やスペースを活用した「空間の貸し出し」という発想は持っていませんでしたね。
「私はこんなことがしたいです」という新しいアイデアや要望が出たら、一緒に話し合いながらスムーズに運営できるよう料金やルールを記した要項を作る。
そして実際に利用していただきながら、微調整を繰り返し徐々に他の皆さんにも利用していただく。
そんなふうにして、ヨガやギター教室などの『朝活コース』や、昼過ぎからの英会話スクール、ダンススクールなどの『場所貸しコース』も作りました。
他にもシェアキッチンや映画の上映会、投げ銭ライブ、ゲストハウス、いろいろなアイデアをいただき実現してきました。
テーマ設定をした1日がかりのイベント企画を持ち込んでもらって、共同で主催することもあります。
━━ 柔軟に利用者の方のアイディアや要望を採用する姿勢が、さらに新たなアイディアや要望へと繋がっているのですね。
拓さん そうですね。
場所利用のアイディアもそうですし、出店に関するアイディアや悩みも気軽に相談してもらいたいですね。
僕自身、さまざまなマーケットに参加した経験や出店者さんとの繋がりがありますので、何かしらアドバイスが出来るかと思います。
━━ 出店するとなると、考えなければいけないことがたくさんありそうです。
拓さんそうですね。出店をするまでに、値段の付け方や告知の仕方など、思っている以上に考えることがたくさんあるんですよね。
魅力的な商品やサービスを提供しているだけでは、お客さんに響かない場合もあります。
気軽に相談してもらって、素敵なサービスや商品をより多くの方に知ってもらうきっかけになれたら嬉しいです。
マーケット開催に必須。地道な下準備や雑務を全力で楽しむ
━━ 今年の11月で9周年を迎えるということですが、長年続ける中でやりがいに感じる部分はどのようなところでしょうか?
拓さん出店してくださった方が個人でお店を持つようになるなど、次の一歩を踏み出したという話を聞くとやはり嬉しいですね。
もちろん、うち以外にもさまざまな場所で出店されたり個人で努力を積み重ねてきた結果ですが、そのきっかけの一つになれていたのであれば、やり続けてきてよかったなぁと思います。
━━ その一方で大変だと感じる部分はどのようなところでしょうか?
拓さん実際にマーケットを開催・運営するためには、日々の地道な下準備や雑務が大切なんですよね。
例えば、宣伝のため周辺地域にポスティングをしたり、必要な備品をDIYしたり。
気乗りしないこともありますが、せっかくやるのであれば、その時間も全力で楽しみたいなと思っています。
ポスティングは自転車で移動しながら行っているのですが、どうしたらもっと宣伝出来るか考えた結果、荷台部分にマーケットの告知となる旗を付けたり、前カゴから好きにチラシを取れるようにしました。
DIYは一人で黙々と行うのではなく、SNSで協力者を募ってみんなでワイワイ楽しみしながら行っています。
より自由度が高く、やりたいことを実現できる場所に
━━ 地道な下準備や雑務を楽しもうとする工夫、とても素敵です。
実際にDIYされた室内の備品を見ていると、どれもすごくクオリティが高いですね…!
拓さんありがとうございます。実は週一回、実家の材木屋を手伝っていまして。
DIYの知識が付きますし、何より昔から慣れ親しんでいる仕事なので、すごく充実した時間となっています。
最近は長竹材木店でも2ヶ月に1度のペースで『長竹材木店DIY市場』というイベントを開催するようになったんですよ。
幼児から小学生向けの『作って遊ぼう体験』や小中学生向けの『DIY講座』や薪割り体験、など材木屋ならではの企画が楽しめます。
『住宅相談会』では、リフォームの相談や、電気、水回り、外装工事などのご相談もいただいており、地元で長く培ってきた経験と繋がりが役に立つ機会が増えてきました。
もっと多くの方にとって材木屋が身近な場所になったら嬉しいですね。
━━ 普段はなかなか材木屋さんに行ったり、ものつくりに触れる機会がないと思うので、大人にとっても子供にとっても貴重な経験になりますね。
路地裏マーケットとして、今後取り組みたいことはありますか?
拓さん特にはなく、その時々で自分や利用者の方がやりたいと思ったことを実現していけたらいいですね。
そのためにも、スタッフや出店者さんにお任せできる範囲を増やして、場所としての自由度をあげられたらいいなと思っています。
━━ 自由度が高まれば、より魅力的な場所となっていきそうですね。本日はありがとうございました!
編集後記
思い入れのある場所を残したい、素敵な小商さんを伝えたい、という拓さんの二つの”想い”が重なった結果生まれた「路地裏ガレージマーケット」
今年の11月で9周年を迎え、すっかり与野になくてはならない場所となりました。
いくたびに変わる多種多様な『こだわりの小商いさん』にお客さんとして毎回ワクワクさせられることはもちろん、誰しもが出展者側になる可能性があることが多くの人を惹きつける要因かもしれません。
週5回の開催なので日常の延長線上でふらっと遊びに行ける気軽さも魅力的。
ぜひ一度、みなさん遊びに行ってみてください!
SHOP INFO
- 店舗名:路地裏ガレージマーケット
- 所在地:埼玉県さいたま市中央区鈴谷7丁目7−3
- お問い合わせ:090ー4458ー6349
- 営業日時: 水・木・金・土・日 11:00〜17:00
- 定休日: 月・火
- HP:https://www.rojiuragarage-market.com/
- SNS:@rojiura_garage_market