取材が終わった後に、3歳以上を対象にした「いろのはクラス」があると聞いて参加させてもらうことに。
この日の参加者は小学校2年生の男の子が一人と4年生の女の子が二人。
画材を使った創作なんて何十年ぶりで、何を作ろうか頭を悩ませる大人を横目に、躊躇いなく想い想いの創作活動を始める子どもたち。



『みんなのアトリエいろのは』は、学校や一般的な習い事のようにやることが決まっているわけではないし、「上達」や「習得」といった目的がある場所ではない。
粘土や木、絵の具、インク、パステル等、アトリエにある100種類以上の画材を使って自由創作をする場所だ。


「何かを教える教室ではないのですか?とよく驚かれます」とおどけるのは運営者の保坂雪絵さん。

子供たちは彼女のことを先生ではなく『雪絵さん』と呼ぶ。
「昔、雫を思い通りに描けない子供がいたので、参考までに私の雫の描き方を伝えようとしたんですよね。そしたら『描き方を探求するのが一番楽しいんだから必要ないよ』って言われて(笑)」
『いろのは』には、教えてもらうスタンスで来る子供はほとんどいない。
「ある時は、どうしてもイソギンチャクが上手く描けずに助けを求めてきた子供がいたので、私自身の描き方を教えたのですが、あまり好みではなかったのか、自身で試行錯誤を繰り返し自分の描き方を編み出していったんです」
助けを求められたときには、アドバイスをするが強要はしない。
子供たちは、アドバイスが今の自分にとって必要なのか自分で考えて判断する。
想像力をかき立てる豊富な画材と、優しく見守りながら必要な時に必要な声かけをしてくれる人。
『いろのは』には内から湧き出る創作意欲が最大限に引き出され、表現出来る環境が整っている。

雪絵さんが自由創作のアトリエを始めたきっかけは、絵画教室の先生として働いたことだった。
小さい頃から絵を描くことが好きで高校・大学は美術を学べる学校に進学。
卒業後は住宅デザインやリフォームの会社で働き充実した日々を過ごした。
40才の時、子育てに専念するため退社したあと、専業主婦の期間を経て、様々な仕事を経験。
ある時、新聞の広告にのっていた子ども向け絵画造形教室の先生の仕事にピンときた。
「その教室で、ある時に赤と黒だけ使って絵を描く子供がいたんですよね。
たくさん色がある中で、なぜその2色しか使わないのか気になりました」
色々と調べる中で、使用する色や描く物による心理状態の違いについて学ぶ【色彩心理学】に出会った。
本で学ぶことに飽きたらず、週一回ペースで色彩心理学が学べる学校に通うように。
そこで、自由に自分の作りたいものを作ることを推奨する『自由創作』という考えを知った。

「絵画教室で働いているとき、子供によって得意なことや描きたい絵が違うことがわかってきて、カリキュラム通りに同じことをさせるのはちょっと違うのかなと感じていたんですよね。その時に『自由創作』の考えを知り、自分の内側から出てきたものを表現する方が、本来の美術の在り方だよなって思いました」
どんどんとのめりこみ学校を卒業後、自由創作のアトリエを始めた。
当時、周りで同じようなことをやっている所はほとんど無かったという。
「不安ですか?特に無かったです。困難が現れたら、その都度対応すればいいかなって思うタイプなんです」

アトリエを開いてすぐに、元々繋がりがあった自閉症やダウン症の子供が通ってくれた。上手く言葉や態度で表せない気持ちをアートを通じて表現する姿を見て、改めて自由創作の可能性を感じたという。
開いた当初から続けているのが親御さんとの連絡ノートだ。
親御さんから、子供の最近の様子や出来事を共有してもらい、雪絵さんは、子供が作った作品から感じたことを色彩心理学の知識を取り入れながら共有する。
「例えば、色づかいやモチーフから『こんな気持ちを持っているのでは?こんなことに興味があるのでは?』と考えて、その日の様子を含めて感じたことをノートに書くようにしています」
いつも一緒にいるからこそ気づきにくい子供の変化や想いを、創作を通じて知ることが出来るのは、親御さんにとっても貴重な機会となっている。


教室は3歳以上を対象にした「いろのはクラス」以外にも、3歳以下のお子さん、親子、大人、それぞれを対象としたクラスがあり、多くの枠で空き待ちが出る状態だ。
「お手伝いしてくれたり、クラスを任せられる人が居たらいいなとは思っています。特段、美術の知識が無くとも相手の気持ちに寄り添える人であれば大丈夫です。
将来的にはクラスに区切らず、子供も大人も好きな時間に来て、好きな表現をして、好きなタイミングで帰れるような場所を作りたいんです」
と、ワクワクする将来の展望を語ってくれたが、大々的に募集をすることは考えていない。
誰かの内側から、手伝いたいと思う気持ちが溢れ出ることを楽しみに待っている。
「個人的なことでいえば、創作の時間をもっと取りたいんですよね。最近は染色や日本画を習いに行きましたし、畑も始めました。自然に触れることほど創作意欲を描きたてられることはないかもしれません。あとはあれもやりたくて…」と、自己創作について語り始めると止まらない雪絵さん。
その手元では絶え間なく自己創作が続けられていた。


自由創作を見守る彼女自身が、誰よりも創作意欲に溢れているのかもしれない。
SHOP INFO
- 店舗名:みんなのアトリエ いろのは
- 所在地:さいたま市緑区東浦和3ー18ー19
- お問合せ:070ー2164ー3713
- 営業日時:HPをご確認ください。
- HP:https://ironohaart.com/
- SNS:@ironohaart2004