棚に並ぶたくさんのキット。
表面に写った完成品のイメージを見ていると、ワクワクする一方で本当に作れるのかという不安が頭をよぎる。
せっかく普段は縁のないアクセサリー作りにチャレンジするのだからと思い直し、“作れそう”よりも“作りたい”という気持ちを優先してキットを選択。
東浦和駅から徒歩5分ほどのところにあるアクセサリーショップ『MON PARURE』。
運営する下島さんは全国各地でアクセサリー作りのレッスンやビーズ誌への作品デザイン提供を行う傍ら、ショップでも定期的にレッスンを開催している。
アクセサリー作りに取り組む人を増やしたいという想いから下島さんが作ったキットは、初心者でも1人で簡単に作れると多くの人から好評だ。
とはいえ、手先が不器用なこともあり手芸に苦手意識を持つ自分にとって、いつでも質問ができるレッスンの環境は有難い。
下島さんの助けも借りながら作り始めてみると、思っていたよりも作業のパターンはシンプルなことに気付く。
ひと針、またひと針縫うごとに徐々に自信が芽生えてきて少しずつ楽しく、少しずつ没頭していく。
次の作業の要領がいまいちつかめずに一瞬手を止めると、すかさず「これは…」と的確なアドバイスをしてくれる下島さん。微細な変化を見逃さない姿勢がなんとも心強い。
黙々と作業に取り組みながらも、時に他の生徒の方と和気藹々とおしゃべりする時間がレッスンにメリハリをもたらしてくれる。
元々キャビンアテンダントとして働き、結婚を機に専業主婦となった下島さんがアクセサリー作りに出会ったのは33歳の時。
「ある日訪れた雑貨屋さんで好みのブレスレットに出会ったのですが、気軽に購入できる値段ではなかったんですよね。
その時一緒にいた友人がたまたまアクセサリー作りをやっていて、材料を購入して自分で作ればずっと安く済むし、思っているよりも簡単に作れることを教えてくれたんです」
早速アクセサリー作りの本を購入し、気に入ったリングを作り始めてみることに。
一つ、また一つと作るごとにどんどんとのめり込み夜な夜な制作する日々。
「気づくと100個近く制作していました。小さなパーツが組み合わさることで、立体的なものが簡単に出来上がる不思議さに惹かれていったんですよね。ものつくりが好きな母親の影響で幼少期からフェルト人形作りや編み物に取り組んでいるのですが、それらとはまた違った面白さでした」
隙間時間を見つけてはアクセサリーを制作し、周囲の人にプレゼントしたり自分自身でつけていると、ある日友人に「アクセサリー作りを私にも教えて欲しい」と声をかけられた。
その言葉がきっかけで、周囲の友人にパン教室や編み物教室の先生がいたこともあり、お互いの得意なことを教え合うように。
開催するごとに教える人数が増加。すると、友人同士であることが話題になった。
「準備に相応の時間がかかるし、レッスン料を支払おうという話になったんですよね。初めは趣味で教えていることにレッスン料をとるのはいかがなものかと思いました。ちょうどその時期にWeb上でアクセサリー作りの民間資格を発行している協会を見つけたんです」
早速、資格を取得するための講座を受講。
教え方を体系的に学んだり知識を習得したことが下島さんにとって自信になった。
「無事に資格も取得できたので、そこからレッスン料をもらって教えるようになったんです」
さまざまなご縁にも恵まれ、徐々に活動の幅が広がっていった。
資格講座の講師や雑誌の連載、本の出版などを経験。
「忙しい日々の中で、数十分でも周りのことを忘れて没頭する時間と完成した時の達成感が生活にメリハリを生むと思うんです」とアクセサリー作りを教える原動力についてイキイキと語る下島さん。
気づくとアクセサリー作りを始めてから23年に。
関わりが深くなるほど、業界全体について考えて行動することが増えっていった。
本の掲載作品に使用する材料は出来るだけ手軽に入手できるものを使用。
品番を記載し、材料屋さんに行けば誰でも気軽に材料を揃えることができるようにしている。
「目当ての材料を購入するために、実際に材料屋さんに足を運ぶことで他の材料に触れるきっかけにもなると思うんです。それが次の作品を作る意欲やアイディアにつながったら嬉しいですね。
生徒さんには作品を作る喜びを、メーカーさんや材料屋さんには売り上げで貢献していけたらなと思っています。」
生徒の方から下島さんの作品に限らず、他の講師の方の作品の作り方についてアドバイスを尋ねられれば、惜しげもなく自身の知識を伝える。
メーカーからまとまった量の材料を仕入れ、ショップでの量り売りを行っている。
行動の原動力は業界全体に良い循環を起こすこと。
その彼女の姿勢がさらに新たなご縁を紡いでいる。
「本当はもっとショップにいる時間や、ショップでのレッスンの時間を増やせたら良いなと思うのですが」と苦笑いする下島さん。
ショップをより地域に開いていきたいという想いから、ショップのスペースを活用してもらい、定期的にお花や香りのレッスンを開催している。アクセサリー作りのレッスンを受けている生徒の方を中心に多くの方が参加した。
小商の方にはチャレンジの機会を、生徒の方には新たなものつくりに触れる機会を生み出している。
「私がいなくとも、みんなで集まってアクセサリー作りをしてもらっても全然構わなくて。日常から離れてホッと一息つく時間を過ごしてもらえたら嬉しいです」
アクセサリー業界に循環を生み出してきたように、彼女の提供する“場”が地域に循環を生み出していきそうだ。
SHOP INFO
- 店舗名:MON PARURE(モンパルレ)
- 所在地:埼玉県さいたま市緑区東浦和4-1-16 東宏ビル6・2F
- お問合せ:048-799-2406
- 営業時間、定休日:インスタグラムをご確認ください。
- Instagram:@monparure_yukoshimojima
- HP:https://monparure.com/