価格と美味さ、提供スピードに定評のある人気のハンバーガーチェーンから徒歩10秒ほどのところに、ハンバーガーのロゴが描かれた『ジ オールドマンズカフェ』という名前のお店を発見。
今話題の、鮮やかな見た目と豊かな味が楽しめるグルメバーガーのお店だろうか。
メニューにはバラエティ豊かなハンバーガーの名前が並ぶ中、オススメと書かれた「No1ガーディアンズバーガーセット」に目が止まる。
その視線に気づいたのか「『No1ガーディアンズバーガー』は豚肉を使っていて、一昨年に販売を始めてから、すぐにうちの一番人気の商品になったんですよ」と店主の大塚さんが教えてくれた。
オススメであり、人気No1。そう聞いて頼まずにはいられなかった。
セットのドリンクも頼みカウンターに座る。
カウンター越しに作業風景を覗き見ると、どうやら都内で人気のハンバーガー屋さんにあるような鉄板ではなく、フライパンで肉を、トースターでパンを焼いているようだ。
注文から約5分、手際の良い作業を眺めていたらあっという間にバーガーが提供された。
バンズの間にはパテ、チーズ、ハッシュドポテト、葉野菜。
イメージしていたようないわゆるグルメバーガーとは違う、そのシンプルな見た目と色に驚かされる。
肉とハッシュドポテトの相性っていいの?
ソース、かかってないけど忘れたわけではないよね?
と、さまざまな疑問が頭を駆け巡りながら、大口を開けて一口頬張る。
思わず唸った。
食べた瞬間、口の中にパテの甘みとチーズのコクが心地良く広がっていく。
肉汁をたっぷり吸ったハッシュドポテトから旨みが溢れ出す。
バンズは良い意味で主張せず、具材の味を引き立たせている。
噛むほどに具材が混ざり合い、気づくと溶けて一つになって消えていく。
見た目通りの食べ応えがありながら、驚くほどに後味がさっぱりとしていて食べ始めると止まらない。
「特別なことはしてなくて。素材がいいので、その良さを邪魔しないように調理をしているだけです。気をつけていることをあげるとすれば、食べ終わった後に食べ疲れていないことですかね」
たしかにこのまま完食しても食べ疲れなさそうだ。いや、でもそんなことがありえるのだろうか。
『食べ応えがあるのに、食べ疲れない』
という相反する二つの事象が並存していることに頭が混乱する…。
しばらく黙り込んでいると「実は…」そう切り出して、その秘密について説明し始めてくれた。
パテには「林SPF」というブランド豚を使用している。
この豚肉の良さを最大限に引き出すことが、全ての中心となっているらしい。
「『林SPF』は旨みやフルーティーな香りが魅力的ですが、最大の特徴は口溶けです。人間の体温で脂が溶けていくので、それが食べ疲れない要因となっています。
出来立ての時は口の中でサラッと溶けて、冷めた時はゆっくり溶けていく。だからどの状態でも美味しいんです」
ハッシュドポテトは塩分が控えめで肉汁を吸ったときに肉の旨みを真っ直ぐに吸い込むものを、チーズは肉の塩分と相性が良くミルキーなデンマーク産を使用。
パンは酸味が少なく華やかさを持ち合わせていることが特徴で、肉に合うよう過去に80回以上の試作を繰り返してきたそうだ。
「今でも肉の変化に合わせて定期的に改良を繰り返しています」というこだわりよう。
肉に合わせて徹底的に素材にこだわることがバーガーとしての一体感、そして
『食べ応えがあるのに、食べ疲れない』
ことを生み出している。
お話を聞きながら、一緒に頼んだフルーツスカッシュを一口飲む。
フルーツの酸味と甘味がしっかり感じられて美味しい。
後味はさっぱりとしていて口の中が綺麗にリセットされるので、自然とバーガーを頬張りたくなる。
あれ?もしかしてと思って大塚さんを見るとニヤリ、
「実はドリンクにもこだわっているんです」と切り出した。
「メインのドリンクはフルーツスカッシュとコーヒーなのですが、どちらもフルーティさを大切にしています。ドリンクがフルーツソースのような役割をしてくれているんですよ」
フルーツソースが料理にもたらすような適度な酸味と爽やさの役割を、ドリンクが担うことによって、ドリンクを含めた『バーガーセット』に一体感を生んでいる。
そのこだわりに感嘆する。と同時に、大塚さんがどんな人生を過ごしてきたのだろうか。
そのことが気になって仕方がなかった。
大塚さんが料理に興味を持ち始めたのは小学校2年生のときだった。
図書館でレシピ本に載っている料理の完成写真を見て、調理工程やレシピを妄想。
一通り考え尽くした後にページを遡り、答え合わせをするのが日課で家でも料理を作る機会が多かった。
「中学校卒業のときには和洋中の料理が全て作れました」というほどに料理に熱中し探求する日々。
高校一年生のときに始めた喫茶店のアルバイトを皮切りに、スペインバルや和食のお店で飲食店の経験を積んでいく。
経営の勉強をしたいとコンサルタントとして働いた後に、満を持して千葉県で和食店を開店した。
順調に売り上げを伸ばし、同じく千葉で二店舗目を構えることに。
夜の時間帯を中心とした和食店とのバランスを考え、昼間の営業を中心に出来るジャンルとして選んだのが「ハンバーガー」だった。
「昔からハンバーガーが特別に好きだったという訳ではなく、本当にたまたまです」と笑う大塚さん。
ハンバーガー屋で修行をしたり有名店を食べ回って熱心に研究をした訳でもない。
だからこそ慣習や常識に囚われない独創性に富む大塚さんのハンバーガーは、すぐに業界から一目おかれるようになった。
「実は予約制で、様々なジャンルのコース料理やオードブルのオーダーを受けています。そこで得たインスピレーションがメニューのアイディアになることも結構ありますね」
様々なジャンルのお店で培った経験と、幼い頃から持ち合わせたあくなき食への探究心も、唯一無二のハンバーガーを生み出し続ける要因なのかもしれない。
取材の帰り際に「オールドマンズバーガー」の写真が目に入る。
大塚さんであれば、この派手な見た目にも必ず合理的な理由を持って作っているはずだ。
写真を見て工程やレシピをじっくり妄想したとしても、きっとそれを軽々超えてきてくれるのだろう。
今度はどんな驚きが味わえるのだろうか。楽しみで仕方がない。
SHOP INFO
- 店舗名:The oldman’s Cafe.(ジ オールドマンズカフェ)
- 所在地:さいたま市緑区大牧1336ー26
- お問合せ:048ー829ー9009
- 営業日時:12:00〜22:00
- 定休日:水曜日
- 駐車場:1台
- HP:https://theoldmanscafe.net/
- SNS:@theoldmanscafe2626