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「味わい深さ」をそのままに 。 / 家具屋 エドライフ

個人事業主

待ち合わせの時間に到着すると、冨浦さんは来客者と何やら楽しそうに話し込んでいる様子で、「中で待っていてもらえますか?」と工場内に案内された。

しばらくすると「ごめんなさい!お客様と話が盛り上がっちゃって」と言いながら、小走りで駆け寄ってくる冨浦さん。

挨拶と世間話もほどほどに

「どうしてメディアを始めたんですか!?」
「地元はこの辺りなの?」
「僕も浦和を盛り上げたいと思っていて!」

と、矢継ぎ早に質問を投げかけてきた。
圧倒されつつも、純粋な好奇心から話してくれているのが伝わってきて、なんだか嬉しい。

「みんなのアトリエ いろのは」の雪絵さんが、おしゃべりで面白い人がいると紹介してくれたその意味を理解するのに5分もかからなかった。

冨浦さんが運営する「エドライフ」では家具の販売・修理・製作を行っている。

8年前、当時は珍しかった桐箪笥のアップサイクル※1を行っていたことがメディアに取り上げられ一躍有名に。
全国から依頼が届くようになり、今では大係な仕事は1年待ちという状態だ。

※1 不要になった物の特性を活かしデザインや使い勝手をアップさせる手法

Before→After

Before→After

依頼の相談を受けると可能な限り直接会うか、電話をして丁寧にヒアリングすることを欠かさない。
お客様の「ひととなり」を知り、想いを汲み取った上で相手にとってベストの形を提案する。

修理をしながら使い手のストーリーに想いを巡らす時間が何よりも楽しいという。
「色褪せた部分を見つけて、こんな使い方をしてたのかなと想像したり。修理をする時にあえて”味わい深さ”が感じられる部分を残したりしますね」

修理中により良いアイディアが浮かぶと
「『追加料金は、不要なんでやらせてください!』って逆にお客様に頼み込むこともありますよ」と豪快に笑う冨浦さん。

完成品を見て泣いて喜ぶ。そんなお客様もいるという。

工場内をぐるっと見渡すと、時計や自転車といった家具ではないものが立ち並んでいることに気づく。

「家具に似たジャンルの気になるものがあったら、分解・再構築したくなるんですよね。興味を持ったらとことん、やり込んじゃう性分で自転車にハマっている時は自転車屋、時計にハマっている時は時計屋と勘違いされるくらい(笑)。
その過程で仕事に活かせる新しいアイディアが生まれることもあります。あと、単純に楽しくてたまらないんですよね!」と、子供のようにキラキラとした目で教えてくれた。

通常は購入する引手金具を自身で作成している。

好奇心旺盛で明るい。冨浦さんはそんな言葉が似合う人だ。
根っからの人好きなのだろう。初対面なのに初対面と思わせないところがある。

だが、そんな冨浦さんにも過去には辛い時期があったという。

家具職人を目指し美大に進学。
卒業後、オーダー家具店で2年、家具修理販売店で8年腕を磨いた後に独立した。

当時は日本で働くつもりはなかったという。
「海外で日本人が日本の家具を修理して売ってたら面白いじゃないかと思って、退職後は海外を何箇所か旅行して見て回っていましたね」

しかし実際に海外で自社工場兼店舗を持つことは、想像以上に課題が多かった。
途方にくれた様子を見かねた知り合いが、東浦和の空き物件を紹介してくれたことがきっかけで家具の修理屋を始めることに。

だがツテもないままに始めたため、仕事の依頼は全く無く精神がどんどんと追いやられていく日々。

「あの数年は本当に辛かったです」と、当時のことを振り返る冨浦さんの顔は少し曇っていた。

骨董品の海外向けネット販売を始めると一時的に好調だったが、徐々に本来の家具の仕事ではないことで生計を立てることに違和感を感じるように。
その時期に商工会の方に紹介してもらったことがきっかけで、さいたま市の合同展示会に参加。

これが大きな転機となった。

「僕のおばあちゃんの桐箪笥をアップサイクルして展示したら、それが予想外に好評でした。その後これでダメなら辞めようと、思い切って日本最大級の展示会に参加したんですよね。他の参加企業は大手ばかりで展示品はどこも新品。その中で中古の桐箪笥のアップサイクルを展示したんです(笑)。でも当時は物珍しかったこともあって、多くのメディアに取り上げらてもらえました」

きっかけを掴むと早かった。
元来持ち合わせていたトークスキルと会社員時代に磨いた技術のおかげで、どんどんと仕事が舞い込む日々。すぐに明るさを取り戻していった。

人生を振り返ると紆余曲折あったという。

「記事には書けないようなこと含め、本当にさまざまなことを経験してきました(笑)。決して真っ直ぐでスムーズな人生ではありませんでしたが、全ての経験を糧にして今の自分がいると思いますね」

年を経るにつれて、些細な幸せに目が向くようになった。

「今は仕事も心から楽しめていて、大好きな家具に囲まれて、好きな時に散歩にも行けて毎日が幸せです」と屈託のない笑顔を見せる冨浦さん。

アップサイクルした家具は、新品と見違えるほど綺麗になる。
冨浦さんの仕上げる家具も例外では無い。

その上で、酸いも甘いも経験した彼がアップサイクルする家具には、かつての使い手が日々の生活の中で積み重ねた「味わい深さ」が残っている。

SHOP INFO

  • 店舗名:エドライフ
  • 所在地:さいたま市緑区大間木3ー39ー8
  • お問合せ:090ー8051ー1132
  • 営業日時、定休日:事前予約をお願いします。
  • HP:https://www.edolife.net/
  • SNS:@edolife_creation