誰もが自由に表現できる場所を。 / gallery&space fufu.

北浦和駅からバスにのり「東下木崎」で下車して徒歩７分。
駅前の喧騒から離れた静かな住宅街に「gallery&space fufu.」はある。

柔らかな光が差し込むアメリカンスタイルの家の前には、ピザ釜にハンモック、オージープランツ…。まるで海外にいるかと思わせるような雰囲気の庭が広がっている。

庭の入り口から家に向かって流れる風が心地良い。
冬でも緑が豊かで、穏やかな気分になる空間だ。

「統一感は特に気にしていなくて、ただ夫婦で好きなアイテムを集めていたらこうなったんです。年々、物や樹木が増えるから、手入れすることが増えていくんですよね。特にオージープランツは自由奔放に成長していくから剪定が大変なの（笑）」と茶目っ気たっぷりに笑いながらオーナーのＫａｙｏさんが教えてくれた。

「gallery&space fufu.」は２０１８年４月に
旦那さんと２人暮らしの、自宅の一階と庭を解放したギャラリー&スペースだ。

作家さんの作品展示やワークショップ、地元の方のヨガ教室や金継ぎワークショップ等に幅広く利用されている。

庭や水が自由に使えるため、染め物教室マルシェが開催されることもある。

「誰もが自由に表現出来る場所にしたかったので、出来るだけ制約を減らしています。これから飲食の営業許可を取ってカフェをやったり、食べ物教室も開催できるようにしたいと計画中なんです。」
将来のビジョンを語るＫａｙｏさんの目はキラキラと輝いていた。

最近、よく取り組んでいる、ガラスでのアクセサリー作り

Kayoさんは母親の影響で、小さい頃から編み物や刺繍、服作りをしていた。
子供と関わる仕事がしたいと思い、専門学校を卒業して幼稚園の教員として勤務。
そのころも運動会の衣装や発表会の小道具と、ものつくりをする機会が多かった。

本格的な作家としての活動を始めたのは４０歳の時。
「欲しいイヤリングがなかなか見つからなかったんですよ。であれば、自分で作っちゃおうと思ってシルバークレイを始めました。」

シルバークレイは
アートクレイシルバー（銀粘土）という純銀の微粉末と水とバインダーが混ざり合った粘土状の素材を好きな形に造形後、焼き上げると純銀に変わるというものだ。

自由に造形できるところに魅力を感じ、教室に通って夢中で技術と資格を習得した。
どんどんとのめり込み、シルバークレイ作家としてギャラリーでの展示会やワークショップをする機会も次第に増加していった。

「ワークショップを通してシルバークレイを実際に体験してもらえるのは、すごくやりがいを感じました。ただ、シルバークレイは焼き上げる作業があって、匂いや煙が出てしまうのでＮＧというギャラリーも多かったので、場所探しに苦労していたんですよね。周りの作家さんにお話を聞いても、同じようにギャラリー探しに悩んでいる方が多くいて。いつしか、出来るだけ制約のないギャラリーを作りたいと思うようになってきたんですよね。」

その想いが浮かんだ時にはすでに、現在の家に居住していてギャラリーを始めるイメージもあったが、日々の忙しさから、なかなか計画を進めることが出来なかった。
ようやく自分の時間を確保できるようになったのは５年前。
温めていた構想を旦那さんに相談すると快諾してくれ、「gallery&space fufu.」を開くに至った。

ところが、開いて間もなく新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた。
室内利用をメインに考えていたこともあり、なかなか利用者が増えない日々が続く。
室内が難しいのであればと思い、ある日思いつきで、庭を利用して地元の美味しい食べ物を集めた「美味しいものマルシェ」を開催してみた。すると、これが好評だった。
初めこそ集客に苦労したが、定期的に開催していくと、徐々に地元の方で賑わうようになった。

「fufu自体、初めは作家さんの展示会やワークショップをメインに利用してもらおうと考えていました。ですが実際に始めてみると、マルシェをきっかけに地元の方がヨガ教室や金継ぎワークショップ、フワラーアレンジなどで利用してくださるようになって。嬉しい誤算でした。」

それからは、マルシェの時に一部のスペースを利用して、作った商品を初めて販売する方限定の「初めてさんの手作り市」や、素材を安く仕入れることが出来る「素材の蚤の市」などを開催。
ものつくりや、自分でビジネスを始めたい地元の方の背中を押すような機会を積極的に作っていった。

「それらのイベントに参加したことがきっかけで、別のマルシェに参加したり、ネット上で販売するようになる方も出てきたんですよ。今はこの場所をきっかけに、次のステップにいってもらえることが何よりも喜びなんです。作家さんは、もちろん、もっと地元の方が自由に表現が出来る環境にしていきたいです。」

自由奔放に広がる個性的な枝や樹形を持ったオージープランツを整えるように、新たな挑戦をする人が自由に表現できる環境を少しずつ整えている。