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繊細で味わい深いタイ料理を。/ タイキッチン ウアムファン

グルメ

とっても美味しいタイ料理屋さんを見つけてしまった。

「辛みや甘みがダイレクトに伝わってきて刺激的で美味しい」

タイ料理に対して、そんな印象を持っていたのだが『タイキッチン ウアムファン』のタイ料理は、その上で味に深みがあるのだ。

噛むほどに旨みが溢れ出て、ゆっくりと味わいたくなる。
食べ終わった後に優しい余韻で口の中が満たされていく。

店内にはさまざまなタイに関連するアイテムが

タイ人のチャンウィットさんと日本人のなほこさん夫婦が営業する「タイキッチン ウアムファン」は、北浦和駅東口から徒歩5分ほどの場所にある。
料理の仕込みや新メニューの作成は主にシェフのチャンウィットさんが担当。

世界3大スープの一つとされるタイの伝統料理、トムヤムクンに麺を入れた「トムヤムラーメン」はウアムファンの人気料理の一つ。

トムヤムクンが苦手な方も「美味しい!」と絶賛する一品だ。

「シェフは日本料理が大好きなので、出汁や味付けの順番にこだわりがあります。それが日本人が食べた時に、美味しいと感じる『味の深み』に繋がっているのかもしれません」となほこさん。

鶏ガラの出汁は4〜5時間かけて取り、頻繁に味見をしながら味を整える。
日本料理ならではの繊細な味をタイ料理で再現するために、どんなに時間がかかる作業でも手を抜かずに行う。

それに…となほこさんが続けた。
「実はシェフは辛みが苦手なんです(笑)」

その言葉を聞いて、厨房で苦笑いをするチャンウィットさん。
「時々、タイの屋台で出るような辛みが強い料理をリクエストされることがあるのですが、味見が怖くてとっても困ります」と辛みが苦手ならではの悩みを教えてくれた。

調理や味付けはもちろん、使用する食材にも強いこだわりがある。
料理に使用するタイハーブはフリーズドライではなく、必ず生のものを使用。
「生のタイハーブは香りが違いますし、体に良い効能がたくさんあるんです。
それを現地と同じ量使用し、同じ調理方法で作るようにしています」とチャンウィットさん。

下ごしらえや味付けは日本料理のように行うが、食材や調理方法は現地と同じにすることで、「繊細で味に深みがあって辛旨い」けれども、「本場のような」タイ料理を作ることが出来るのだ。

ウアムファンで料理に使っている生のタイハーブ

2人の出会いは大学生の時。
なほこさんの通っていた大学に留学していたチャンウィットさんが、趣味で友達にタイ料理を振る舞っていた集まりに、なほこさんが呼ばれたことがきっかけだった。

チャンウィットさんは趣味が高じて、近隣の小学校でタイ料理の給食作りや、地域の国際交流祭での店舗出店を経験。
なほこさんは調理補助としてお手伝いする機会も多く、2人の距離は自然と縮まっていった。

チャンウィットさんは料理を振る舞う機会が増えるほどに、いずれは日本でタイ料理を振る舞う仕事をしたいという気持ちが増していった。

5種類のタイハーブが使用されている「鶏ひき肉のラープ」。野菜に具をのせて食べる

大学を卒業後、サーダーさんは日本のメーカーに就職し、なほこさんは日本語教師の仕事に就いた。2人は結婚し、子宝にも恵まれ充実した日々を過ごしていたが、代わりにチャンウィットさんはタイ料理を振る舞う仕事をしたい気持ちを胸の中にしまった。

「メーカーの仕事に比べると収入が不安定になるし、なかなか難しいなと思っていました。定年後にでも出来たらいいかなって」とチャンウィットさん。

仕事にすることは一旦諦めたが、趣味の一環として友達やなほこさんの親戚にタイ料理を定期的に振る舞っていた。

レコードプレイヤーでタイの音楽をかけている

「私の父親は基本的に決まったものしか食べないんですけど、シェフのタイ料理は美味しいと言ってよく食べていたんですよ」と、なほこさん。

お店を開くきっかけとなったのは、そのお父さんが残したある言葉だった。

「父が68歳で亡くなったのですが、その時に書き残していた言葉があって。それが『仕事にしなさい』だったんですね。シェフは口では言わなかったのですがお店をやりたいと思っていたことを、なんとなくお父さんも分かっていたみたいで。その言葉を見た瞬間に『よし、やろう』と2人で決意しました」

タイの民族衣装を着用しているなほこさん

2人は会社を辞め、なほこさんは起業や飲食店経営の勉強、チャンウィットさんはタイ料理の勉強をしながら店舗探しを同時並行で行った。

「私達は東川口に住んでいて、電車で通える距離で店舗を探していました。北浦和は他の地域に比べて個人店が多く、それぞれのお店に常連さんがいたり、お店でゆったり過ごす方が多いなと感じたんですよね。うちは回転重視のお店ではないと思っていたので、合いそうだなと思いました」となほこさん。

お店とお客さんの関係性、街の雰囲気に惹かれ、北浦和でお店を開くことを決意した。
順調に物件も決まり営業を開始。しかし、初めはかなり苦労したそうだ。

「オープン当初は本当に大変でした。私もシェフも飲食店で働いていた経験がなく、座学と実際の経営では全くといっていいほど違うことを痛感しました」

それでもトライアンドエラーを繰り返しながら2年ほど経つと、なんとかやっていけるのではないかと思えるように。ありがたいことに、少しずつ常連さんも増えていった。

「皆さんにいつも助けられています」となほこさん。あるエピソードを教えてくれた。
「オープン当初から比べれば、提供スピードは格段に速くなったのですが、シェフは良い食事を出すために妥協が出来ない性格。とにかく丁寧に丹精込めて作るんです。それを知ってか常連さんが『今日は急ぎだからこのメニューにするわ』と、メニューにかかる時間を把握して注文してくれたりするんです」

常連さんが日に日に増えていくのには、料理の味はもちろん、お二人の人柄や対応力、お客さんとの距離の近さにもある。

「ある日、お客さんが『ガパオムライスをください』っておっしゃったんですけど、うちではオムライスを扱っていなかったんですよね。よくよく聞いてみると”ガパオライス”を読み間違えたみたいで。でも、ガパオを卵で包んだら面白いなと思ったので、作って提供してみたんです。そしたら好評で、今では人気メニューの一つになりました」と、なほこさん。

ある時は、とある取材で知り合ったミニコミ誌の編集長の発案で、料理のレシピ本を作ることに。
料理のレシピと写真、コメントを掲載したページ以外にも、常連さんがお気に入りのメニューを食べている写真とその人を紹介するページを作った。

ウアムファンでは、単なるお店とお客さん以上の関係性が育まれているのだ。

「これからも、お客さんとの関係性を大切にしていきたいと思います。それと今後は、さまざまな宗教や食の好みに対応できるお店にしていきたいですね。ヴィーガンやベジタリアンの方であったり、さまざまな事情で食に制限がある方にも、うちの料理を楽しんでいただきたいです」と、なほこさん。

常連さんに愛されつつ、多くの新規のお客さんが来店する理由の一端を垣間見たような気がした。

これからウアムファンが、お客さんとどのような物語を紡いでいくのか、とても楽しみだ。

SHOP INFO

  • 店舗名:タイキッチン ウアムファン
  • 所在地:埼玉県さいたま市浦和区北浦和1ー6ー1 1F
  • お問合せ・ご予約:048ー799ー3558
  • 営業時間:
    【ランチタイム】平日 11:30〜14:30 土日祝 11:30〜15:00
    【ディナータイム】木~土 18:00〜22:00 日祝月 18:00〜21:00
  • 定休日:火曜日と水曜日のランチ
  • HP:http://www.uamfan.com
  • SNS:@uamfan_nahoko