白と黒の胡麻をあしらったカリカリのシュー生地を頬張ると、中から溢れんばかりのカスタードクリーム。
濃厚なのにさっぱりとしたクリームに胡麻の塩味とコクが加わることによって飽きがこない「シュークリーム」。
ずっしりとした見た目とは裏腹に、口に入れるとスッと溶けてチーズの香りが軽やかに鼻から抜けていく「スフレフロマージュ」。
ポルトボヌールのスイーツはしっかりとした満足感があるのに、もう一つ、またもう一つと食べたくなる不思議な魅力がある。
「うちのスイーツは特別感がないんですよ」と笑うのはシェフの渡邉さん。
フランスや都内のお店で約18年間修行後、現在の地に「ポルトボヌール」を開店して今年で8年目となる。
店舗はテレビや雑誌で取り上げられることも多く、スイーツ激戦区の浦和近辺で多くの人に支持されている。
「お菓子作りのポイントは2つで、温度管理と材料の比重だと思っています」
美味しいお菓子を作れる理由について尋ねると、そう答えてくれた。
専門的で複雑なお話になるかもしれないと思っていたので、その回答のシンプルさに驚く。
「違う素材を合わせるときに同じくらいの温度、重さであれば自然と合わさっていきます。総じていうと”バランス”。バランスが偏らなければ、美味しいお菓子ができると思っています」
これは決して特別な考え方ではなく、
お菓子について学んだことがある人なら誰もが知っている「基本のキ」だ。
その考えは、作っているお菓子のラインナップにも表れている。
オペラやムースといった定番のケーキが並ぶショーケース。
「シンプルな見た目、作り方の王道のケーキが好きなんですよね。それぞれの素材の良さを感じられると思うんです。オリジナルのケーキを作る時も、層は重ねても3層まで。それ以上は作る方も食べる方も大変じゃないですか」と最後はおちゃらけたように話す渡邉さん。
見た目や味のインパクトがあるケーキが、代わる代わるにSNSを賑わす現代で、王道のケーキは面白みに欠けると感じる人も多い。
それでも王道のケーキが長年愛され続け、人々から求められる理由を渡邉さんは深く理解している。
そんなポルトボヌールのショーケースに、インパクトのある見た目のオリジナルケーキが並ぶことがある。
丸ごとの桃を使った「桃太郎」は、いまや北浦和の夏の風物詩と言っても過言ではない一品だ。
「タネをくり抜いたジューシーな桃の中に、コクのあるカスタードクリームと爽やかな生クリームを入れ、下の土台となる部分には食感や味のバランスを考えてフィナンシェを使用しています」
桃のジューシーさを保つことを最優先に考えて、桃を丸ごと使用し、さらには周りをジュレでコーティング。
決して狙ったわけではない。
味のバランスや美味しさを追求した結果、インパクトのある見た目となったケーキがショーケースの一角を賑わせている。
新たなアイディアを生み出すのは日々の食体験の積み重ねだ。
「北浦和駅近くの『ビストロクゥー』さんで食べた料理がとても美味しかったので、作り方を教えてもらって、そこから着想を得て作ったスイーツもあります。今まで食べてきたものの蓄積がオリジナルメニューを考える上でのヒントになっていると思いますね」
スイス、スペイン、ドイツ、オーストリア…
食体験の積み重ねは、お店に並ぶスイーツの発祥国にも現れている。
「フランスが中心ですが、それ以外にも今まで食べて美味しいと思ったさまざまな国のスイーツを作っています。店内はいわば僕の『美味しいスイーツ博覧会』なんですよ」とおどける渡邉さん。
渡邉さんの『美味しいスイーツ博覧会』は来場料はかからないので気軽に訪れられるが、中毒性が高いので注意が必要だ。
購入したスイーツはあっという間に無くなってしまう。
「ポルトボヌールのせいで太った」という声も良く聞く。
気づいたら毎日通っていたという可能性も多いにあるだろう。
それでも良ければ、ぜひ行ってみてほしい。
王道、オリジナル、世界各地の渡邉さんが美味しいと思ったスイーツ・・・。
店内では毎日、渡邊さんの『美味しいスイーツ博覧会』が開催されている。
SHOP INFO
- 店舗名:Porte Bonheur(ポルトボヌール)
- 所在地:さいたま市浦和区北浦和1ー24ー11
- お問合せ:048ー711ー8875
- 営業時間:10:00〜19:00
- 定休日:水曜日、第2木曜日
- HP:https://patisserie-portebonheur.com/
- SNS:@patisserie_portebonheur